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NHKスペシャル 病の起源 読字障害 [自然科学]

本日、NHKスペシャル・病の起源、「読字障害」を観た。

人の言葉の意味は理解でき、普通に会話もできるのに、書かれた文字を読むことができない人たちについて、その原因を探るドキュメンタリーである。NHKが得意とする科学特集番組で、なかなか見ごたえのあるものであった。

言葉を聞いているとき、文字を読んでいるときの状態を、MRI(核磁気共鳴イメージング)という手法で測定し、脳のどの部位が活性化されているか(正確に言うと、血流が増加して神経細胞が活発に動作している箇所を特定する)を調べるのであるが、読字障害のある人たちは脳の39,40野の機能が充分に働いていないことがわかったそうだ。この部分の働きが充分でないと、視覚野で認識された文字を言葉に変換することができないらしい。番組では、子供を対象にした読字のトレーニングを紹介し、訓練により(ある程度?)読めるようになるらしいので、必ずしもこの部位の先天的な機能低下というわけではないようだ。もっとも、どのように訓練しても機能が上がらない人たちの遺伝子を解析すれば、先天的なものも見つかるかもしれないが。脳というのは、訓練によって失われた機能が代替されたり、不十分な働きしかできなかった部位の機能が向上したりするので、分子的な機能異常との見分けがつきにくいのかもしれない。訓練により機能が上がらなくても、それは単に有効な訓練が見つかっていないだけなのかもしれず、直ちに分子レベルの異常とは言えないように思う。

面白かったのが、フランスの脳科学者が、「もともと脳は文字を認識するようにできていない」とコメントを出していたことである。脳の中に、言語処理のみを専門に扱う機能ユニットというものは無いという意味であり、言語は人類にとって比較的最近の発明品だからというのがその理由である。とすると、本来別の目的で用意されている部位で、脳は言語を無理矢理に処理していて、それが脳の負担になっている可能性も否定できないわけで、そこに人によって得手不得手が生じてくる。番組中では、読字障害がある一方で建築家として優れた才能を発揮している人の例が紹介されているが、脳の情報処理パターン全体として見ると、異常なのではなくて処理のパターンが異なっているだけなのかもしれない。

このblogや私のweb siteを見てくださっている方々は、恐らく読書が好きか得意な人が多いだろう。少なくとも苦手、という人はあまりいないように思う。文学作品を読むのを楽しみにしている人というのは、作品のプロットを追っていくに従い頭の中にその情景がリアリティを持って構築できる人だと思う。これもまた、一つの才能と言えば才能であろう。現代では、いや、人間が社会生活を営むようになってから、自分の意志や気持ちは、言葉により他人に伝えることになっているので、言葉が自由に操れるのは有利だろう。自分の意志や気持ちを、絵や音楽によって表現することは可能ではある。しかし、論説文や報告文の内容を余すことなく正確に音楽や絵で伝えるのは、おそらく難しいだろう。言葉というのは、科学の論説文のように事実を正確に相手に伝えることもできれば、抒情や美しさを伝えることもできる、極めて柔軟性に富んだコミュニケーションの方法なのである。

以上



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