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小林美希『年収443万円』ー安すぎる国の絶望的な生活、講談社現代新書(2022)

はじめに
第1部 平均年収でもつらいよ
第2部 平均年収以下はもっとつらいよ
第3部 この30年、日本社会に何が起きたのか?
おわりに

収入が無くて生活が苦しい話はめずらしくありませんが、それでは平均年収とされる金額を稼げている人の生活はそれなりに幸せなのだろうか。本書は現在の日本において平均程度の年収(世帯収入)があっても、生活が豊かどころか貧困に近いのではとの問題を提起しています。

私は、2チャンネル創始者のひろゆき氏がYouTubeなどで、生活保護を取ることを割と気軽に薦めるような印象を持っていて、色々な条件はあるにせよ使える金額の大きさからそれは厳しいのではないだろうかと思っていたが、まさにそれが明確に示されている。

就職氷河期に非正規雇用が増え、その人たちの大部分ずっと正規雇用へ転換されずに本日に至り、経済的な安定を失っている。2020年に発生したコロナ禍による臨時休校や様々な自粛は非正規雇用の人たちの家計を直撃したことが、詳細なルポルタージュにより明らかにされます。

本書に登場する人たちは、お金のかかる趣味や生活スタイルを持っているわけではなく、それどころか懸命に倹約に努めています。子供が私立の学校に行く、今のままでは生活が回らないからもっと介護サービスを受けたいというのは、贅沢とは言わないでしょう。本書を読んで、自分の身を引き締めて節約、倹約して貯金しなきゃと思うかもしれませんが、筆者はこう指摘します。それでは景気がよくなるわけがない、と。

ひろゆき氏のトークは人気があって確かに面白いのですが、本書を読んだ後で改めて彼のトークを聞くと、また違った景色が見えてくるように思いました。


年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活 (講談社現代新書)

年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活 (講談社現代新書)

  • 作者: 小林美希
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2022/11/16
  • メディア: Kindle版



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