佐藤勝彦著『インフレーション宇宙論』、講談社ブルーバックス(2010) [自然科学]
佐藤勝彦著『インフレーション宇宙論』、講談社ブルーバックス(2010)
ISBN978-4-06-257697-0 C0244
☆☆☆★★
最新の知見を踏まえて書かれた、宇宙論の入門書です。朝日カルチャーセンターで行われた、一般向けの宇宙論の講演がベースになっているもので、内容および書き方から察するに講演録を起こしたものでしょうね。宇宙の年齢や姿を科学的に捉えるとはどのようなことなのかについて誠実に記載されています。
話の中心はインフレーション理論で、著者はその構築に一役買っていたようです。この理論ができる前後の話も比較的詳しく取り上げられていますので、宇宙論の流れを知るにもよいでしょう。現在考えられている、主な宇宙モデルの紹介もされています。それらはとても直感でわかる代物ではないのですが、そこをなんとかわかりやすく説明しようと試みる姿勢は評価できます。
1998年に、現在の宇宙が加速膨張をしていることが発見されたというくだりから、話は面白くなります。さらに、真空がエネルギーを持っていることは既に実験的に証明されている、ということも面白いですね。ただし、真空のエネルギーは宇宙が膨張しても薄まらないというくだりは感覚的に受け容れがたいですが。さらに話は多数宇宙へ発展し、様々な面白い考え方が紹介されています。
以上
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