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ちきりん著『世界を歩いて考えよう!』、大和書房(2012)、1300円 [エッセイ・随筆]


社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!

社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!

  • 作者: ちきりん
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2012/05/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


ちきりん著『世界を歩いて考えよう!』、大和書房(2012)、1300円
ISBN978-4-479-79348-9 C0095

日本や世界について、主に生活や経済面から考察をするちきりん氏のエッセイである。氏は今までに世界50カ国を旅し、そこで得られた様々な出来事を元に日本の立ち位置を考察する。

第1章 お金から見える世界
第2章 異国で働く人々
第3章 人生観が変わる場所
第4章 共産主義圏への度
第5章 ビーチリゾートの度
第6章 世界の美術館
第7章 古代遺跡の旅
第8章 恵まれすぎの南欧諸国
第9章 変貌するアジア
第10章 豊かであるという実感
さいごに 旅をより楽しむために

普通の旅行本とは異なっていて、自分の実体験を元に考える、というスタイルになっている。各章毎に場所は違うが、全体を通して「日本って、なかなか良い国じゃない」というメッセージにもなっている。国力(経済や国民の教育などの総合指標)が落ちてきていると、私たちはなんとなく思ってしまっているけれど、でもきちんと世界を見て比較してみると日本はとても良い国なんだ!と再発見(?)することができそうである。

私は、1、8、10章を大変興味深く読んだ。自国の紙幣価値を信じられず、米ドルの方が価値があるというのは、事実そういう国が世界にあるし、その国の国民もそのことをよく理解していると頭ではわかっていても、それが具体的にどのようなことなのかは経験しないとわかりにくい、この本は実体験を元に、それをリアルに体験させてくれる。日本のお店で米ドルで払おうとしたらまず断られると思うが、それは暗に皆が「円」に信頼を置いているからだという指摘は、言われてみなければわからない。

最近欧州の経済危機でギリシャやイタリアの財政が悪いと騒がれているが、これら南欧諸国は太陽と自然に恵まれていて、経済力とは異なった豊かさがある、とのくだりからは、一体幸せってどういうことを言うのだろう、と考えさせられる。国の経済力とは必ずしも綺麗に一致しない、とは言えそうだ。「(ドイツあたりから)ユーロ圏に迷惑をかけているだろ!」という文句が聞こえてくるのかもしれないが、個々人の生活や人生を考えたとき、もし仮に生まれ変わるならばイタリアとドイツどちらが良いかと問われたら、皆がドイツを選ぶとは思えない。

インドでリキシャに乗っている(裕福な)子供と、リキシャを引いている貧しい子供がほぼ同じくらいであることに気付いて、そこから格差についての考察が広がっていく。著者は、本当の格差がある社会というのは、当事者がそれを(当然のことのように)受け容れている社会である、と説明する。そしてその背景にあるのは、貧しい人々が変えようとしても変えられない社会制度であり、国力の絶対的な不足なのである。このような貧しい社会では、選択の自由も、希望もない。そこから進んでモノや金が手に入ったとしても、未来の希望や選択の自由がない社会は豊かとは言えないという、最終結論に到達する。

他にも様々な面白い話が掲載されているのだが、相対的に見て日本は結構いい線行っている、住みやすい社会であるというのが筆者の結論のようだ。欧米社会だけでなく、もっと世界を見てから考えよう、というメッセージもそこには込められている。

以上

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