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マーカス・ウォールセン/矢野真千子訳『バイオ・パンク』、NHK出版社(2012) [自然科学]

ISBN978-4-14-081532-8 C0098
1800円
☆☆☆☆☆

第1章 シンプルな遺伝検査
第2章 アウトサイダーのイノベーション
第3章 バイオハッカーの源流
第4章 自分で科学する
第5章 途上国のためのバイオテクノロジー
第6章 価格を下げてハードルを下げる
第7章 遺伝子組換え作物はだれのため?
第8章 遺伝子の所有権はだれのもの?
第9章 リスクのない医学の発展はない
第10章 キッチン発のイノベーション
第11章 生命の言語を読む
第12章 生命の言語を書く
第13章 バイオテロ
第14章 アウトブレイク
最終章(PART IV)

コンピューターはガレージ発の企業や発明が可能だが、バイオテクノロジーにはそれは不可能だとされていた(少なくともそう広く信じられていた)。理由は簡単で、実験施設と専門的なトレーニングが要るから。実験施設とは、フランケンシュタインや映画「ジェラシック・パーク」に出てくる実験室を想像してもらえばよいが、かなり大がかりである。ノートパソコン1台あれば起業できてしまうのと大違いだ。専門的なトレーニングの方も事情は同じで、本屋やネットで情報を集めて独学し、ソフトウェア・コードを書くような具合にはいかない。どうしても学校で専門知識を学ぶ必要があるのである。しかも生物の振る舞いはブラックボックスで、こうすれば必ずこうなるという、プログラミングには無い難しさがある。このため期待通りの結果が出るかはわからない。これがバイオテクノロジーの最大の関門だ。

しかし、時代は変わったのか、DIY生物学者なる概念が既に米国には存在するそうだ。未知の発見や、誰も作れなかった夢の薬を作るとか、そのようなものではなく、既にプロの間では確立され、商品化されている製品やサービスを自宅の、キッチンでやってしまおうとする流れだ。ヒトゲノムが解読されて10年以上の年月が経過し、今では特定の遺伝子に異常があるかどうかも調べることができる。また、遺伝子を構成するDNA断片をオーダーして合成してもらい、宅配便にてそれを受け取ることも可能だ(日本で、個人がオーダーしてやってくれるかどうかは不明)。遺伝子分析技術やそれを利用したサービスは、キッチンで実施可能であり、パソコンソフトと同様に個人で起業可能な世界になったのだ。

僕は、この意味はとてつもなく大きいもののように思う。専門ラボで確立された技術を「小さく、安価に、使いやすく」するだけで世界が変わる。発展途上国でPCR検査、自分を知るためのゲノム解析、ペットや農作物のゲノム解析、等等、応用可能性はとてつもなく広い。シリコンバレーでは独学のパソコンおたくがパーソナルコンピューター(とその上で動作するOS)を作り上げた。DIYバイオテクノロジーは専門家のラボ技術を大衆に広げるという、逆の流れになるだろう。そのうちに学研の「科学」にもバイオ実験キットが付属する時代が来るだろう。

以上



バイオパンク―DIY科学者たちのDNAハック!

バイオパンク―DIY科学者たちのDNAハック!

  • 作者: マーカス・ウォールセン
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2012/02/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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