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数覚 [自然科学]

小平邦彦という数学者が書いた、『怠け数学者の記』というエッセイがある。米国留学時代の覚書や日々書き溜めた雑文(何らかの雑誌に掲載されたもの)の寄せ集めなのだが、この中に「数覚」という面白い記述がある。小平氏によれば、数学は高度に感覚的な学問であって、数学における発見とは自然のなかに埋め込まれた数学を彫っていくようなものだという。そのために必要な感覚が「数覚」であって、この感覚が無いと数学の理解はまず不可能だという。

この、感覚による理解というのは、少なくとも自然科学に広く普遍的な事象であって、遺伝子や酵素といった生命科学の理解もやはりある種の感覚が必要だ。面白いのは、小平氏は数学でも専門が違うと理解できないと言っていて、それは分野が違うと必要とされる感覚が異なるからだという。酵素や蛋白質は理解できても遺伝子が理解できないことあるが、それも全く同じことが起きていると思われる。教科書を見れば一目瞭然だが、生化学とバイオインフォマティックスはかなり異なる。

医学というのは人間の生物学であり、病気を治すための学問体系であるが、医学部みっちりとトレーニングを積むことでヒトという生物の正常、異常についての感覚が発達し、これは医学部でしか身につけることができないといったことを読んだことがあるが、これも同じことである。

それでは、だいたいどのくらい時間をかければこの「感覚」が身につくかという話は、また別の機会に。


怠け数学者の記

怠け数学者の記

  • 作者: 小平 邦彦
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1997/09
  • メディア: 単行本



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