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小野三嗣『ひげの科学』、玉川選書(1980)、979円 [自然科学]

小野三嗣『ひげの科学』、玉川選書(1980)、979円
ISBN4-472-15221-8 C1375
☆☆☆☆★

8年前に阿佐ヶ谷にある古本屋にて購入。長らく書棚の肥やしだったが先日読了。

第1章 ひげと運動生理学
第2章 ひげ診断学
第3章 ひげの生涯
第4章 ひげ推理学
第5章 ひげと我が人生
第6章 ひげと頭髪の比較
第7章 頭髪とふけ
第8章 閑話休題

著者は東京慈恵会医科大学の先生で運動生理学の研究者。中学生か高校生の夏休みの自由研究をそのまま発展させたような内容で、素朴な感じがして読んでいて楽しい。自分の髭の量を毎日測って統計を出し、気温や年齢との相関を分析したり、運動でひげの量が変わるかを調べている。年間のひげ総量の加齢による変化では、なんと20年にわたってデータを蓄積して分析している。ここまでやるか!というほど徹底的なデータ収集はまさに研究者の鏡である。

筆者がひげの研究を始めた動機は、自分のひげならばいつどこででも材料が手に入るから、と述べている。こんないい加減な(失礼)動機で、20年も観察を続けたとはたまげた(^^; 筆者は元々そのような資質を有していて、たまたま材料が自分のひげだっただけで、他のものでも同様なやりかたでデータ収集、分析をやったに違いない。事実、本の中で筆者は、「実験こそがおしゃぶり」と言っている。(pp.112)

6,7章はひげからの発展として、頭髪とふけの話が続く。手法はひげと同様、来る日も来る日もひたすらデータを蓄積してグラフ化し、その変化のパターンを読み取るというものである。

そもそもN=1の観察事実であり(筆者も、その点については理解しており法則を導くのは無理だと述べている)、その結果から人類のためになることが導き出せているわけではない。自分の身体を実験材料として丹念に(しかも長期間)観察し、そこから得られたデータを元にあれこれ考える、夢を膨らませて楽しむのが本書の醍醐味であり、科学研究の仕事というよりは遊び心いっぱいの自由研究の匂いがする。

中学生、高校生あたりにお勧めの本。

以上

ひげの科学 (玉川選書)

ひげの科学 (玉川選書)

  • 作者: 小野 三嗣
  • 出版社/メーカー: 玉川大学出版部
  • 発売日: 1980/05
  • メディア: 単行本



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