藤原正彦『大いなる暗愚』、新潮文庫(2012) [エッセイ・随筆]
ISBN978-4-10-124811-0 C0195
430円
☆☆☆☆★
私は、藤原正彦先生のファンでもあるので、新刊が出たら必ず買って読んでいます。
この作品も期待を裏切らない、軽快でシャレの混じった藤原節を楽しむことができました。
まあ、特に数学に絡んだ話題がたくさん入っているわけではなく、そもそもそれを期待して藤原先生の本を買う人は少ないと思いますが、話題は教育、歴史、会議のやり方、女房と幅広く(というかあまり一貫性が無く)、面白いお話をするおじさんの本といったところでしょうか。
私が一番面白かったのは、やはり数学に絡む話題で、「天才の寿命」というお題のエッセイでした。フィールズ賞を受賞した、イギリス人数学者ワイルズが8年間かけてフェルマー予想を証明し、その後燃え尽きてしまったという話。それは寿命だから仕方が無いと藤原先生は説きます。
今世の中では情報の伝達が早く、色々な商品やサービスの寿命が短くなったと言われます。常に新しい情報や知識を身につけ続けなければならない、と。でも常に学び続けるのも程度問題で、普通の仕事で要求される程度の学びなんて大問題を解決した数学者の燃え尽きと比べたら桁違いに易しいのでしょうね。
以上
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