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鈴木光司『情緒から理論へ』、ソフトバンク新書(2009) [社会科学]

本の帯に、藤原正彦『国家の品格』に異議アリ!と書いてあるのに引かれて購入しました。

日本人に必要なのは、論理力であって情緒ではないと、論理的に考えることの大切さを強調した本です。
もっとも、情緒が不必要と言っているわけではなくて、もうすでに充分すぎるくらいに情緒の方はあるのだから、国際社会に対応するためにも論理力の方を磨きましょう、という趣旨。言われていることは至極ごもっとも、という気がします。

この本では外国人(主に想定しているのは、欧米人)とやりとりすることと情緒と理論の関係についてはあまり触れられていませんが、欧米人との交渉事というのは基本的には理論で進みます。まあ、契約をベースにして物事を進めていくので当たり前なのですが、情緒的な判断というのは入れることはないし、もし仮に入れたとしても何かトラブルがあった場合に大変やっかいなことになるのです。従って、論理的に考えることは努力目標でもなんでもなくて、明日の生活がかかった死活問題であると言えるでしょう。

情緒を大切にする、というのを身近なところで確認したければ、NHKの朝の連続ドラマを見ればよくわかりますね。今は「つばさ」という番組をやっています。あれは歴代情緒のかたまりだと思います。NHKの朝ドラを見ていたのでは、情緒に偏りすぎる弊害は見えてきませんが(番組がそのようにせっけいされているのでしょう)、この本では戦争を例にその弊害についてかなりのページを割いて解説しています。

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『下流社会 第2章-なぜ男は女に”負けた”のか』、三浦展、光文社新書(2007) [社会科学]

昨日、近所の古本屋をブラウジングしていて購入。
以前に『下流社会』を読んでいたので、その続編か、といったところ。

アンケート調査を元に、結果をグラフ化して見せて、そこに著者の毒舌が混じった考察を加えていくというもの。
へぇと思うような意外(奇抜)な視点を提供してくれる。それなりに楽しかった。例えば、購読雑誌と支持政党(ただし自民党と民主党のみ)の関係や、男性の年収別に見た妻に求める年収、とか。データを分析すると、男性以上に収入を得ている女性は、相手の男性には自分以上の収入を得ることを求める傾向にあるとのこと。これが女性が外で稼いで男性が主夫をしている夫婦がほとんど存在しない理由なのではないか、とのこと。この点で、確かに男と女の関係は対称にはなっていない。

一番面白かったのが、男性が好きな女性のタイプと女性が考える自分らしさの分析である。
このデータの分析からは、男性は女性にすがりたいし、癒されたいと思っているが、女性は男性にすがらせてあげたいとも、男性を癒してあげたいとも思っていないとのこと。男性が求める理想の女性像と、現実の女性とではかなりの開きがあるとの結果が出ている。

おそらく、このような調査についてきちんと分析をしようと思えば、いくつもの仮説を検討して検証しなければならないのだろうから、考察部分をそのまま鵜呑みにはできないだろうが、話としておもしろいことは確か。『下流社会』自体がかなり流行った本であり、おそらくこの本も結構流行ったのではないかと推測する。おそらく古本屋でも見つけることができると思うので、興味のある方には一読をお勧めする。

以上





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『サブプライム問題とは何か-アメリカ帝国の終焉』、春山昇華著、宝島社新書(2007) [社会科学]

昨年の10月にリーマンブラザースが経営破綻し、それを気に世界的な(正確に言えば、日米欧を中心とする)規模での不況が起こったのは記憶に新しい。ドルは100円を割り、日経平均も1万円を割り込んでいる。100年に一度の不況とも言われ、デフレが進んでいる。

リーマン破綻の少し前から、米国のサブプライムローン破綻についてはニュースになっていた。現在の不況はサブプライムローンに原因があるとされており、これの理解なくしては現状を把握できない。

とまあ、このように考えて何か手頃な入門書を読んでみようかと思い、ちょうどTUTAYAに行く機会があったので物色して見つけたのがこの本。サブプライムローンの概要がきちんと説明されており、なかなか良書であると言える。金融についてあまり知らなくても心配はない。

読了しての感想は、アメリカ人にとって住宅は(もしかすると日本人以上に)あこがれの対象であること、アメリカ人の消費生活は日本人の感覚から見ると理解に苦しむ(と、少なくとも私は思った)こと(←そんなに簡単に借金するなよな、というのが正直な気持ち)、アメリカでは、国民の借金生活を支えるために実に様々な金融手法が使われていること、そしてそれらは気をつけないとリスクが見えにくくなっていることなど、アメリカ人の危ない消費生活とリスクの見えにくい(見えにくいがリスクは小さくない)金融手法の使用で、アメリカが金融的に見て実に危ない国だ、というのを実感した。

しかし、でも、日本はアメリカにモノを売ってその収入で経済的に成り立っているのだから、アメリカが破綻してしまうと実に困る。著者もこのことはよく理解しており、日本は戦後内需中心の経済運営を経験したことはない、と指摘している。一番良いのは、アメリカへの輸出頼みの経済運営を一刻も早くやめるべきであるのだが、何時、どのようにして行うかについての考察は無い。ただ、このままでは非常にまずいことになる、という危機意識だけははっきりしている。一刻も早い、アメリカ依存型の経済運営から脱却すべきであるが、具体的な妙案は無い。

日本は選挙の投票率が低く、国民が政治に参加しようとする意識が低いと言われる。「どうせ誰が首相になっても日本はあまり変わらない」から、選挙に行こうが行くまいが関係ないという発言もよく耳にする。しかし、今後は「だれが日本の政治のイニシアチブを取るかで、もしかしたら日本の置かれている状況はいまよりもずっと悪化するかもしれない」のである。今後どのような経済政策が打たれるか、そしてそれはどのような理由で行われるのか、私たち一人一人がきちんとそれを見守り、必要に応じて物を言っていかなければならないだろう。もしかしたら、私たちの生活水準をかなり下げざるを得ないような、思い切った経済政策も必要かもしれないのである。

以上

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ケビン・ミトニック『欺術』-史上最強のハッカーが明かす禁断の技法 [社会科学]

前に紹介した、『ハッカーズ』がコンピューターネットワークへの侵入に重みを置いていたのに対し、こちらは広く詐欺一般を扱ったものである。著者は「ソーシャルエンジニアリング」という言葉を使っているが、要は人を騙すのに使う詐欺のテクニックの組み合わせのことである。最近問題になっている、「振り込め詐欺」もこの範疇に入る。

詐欺のプロから教えを乞うのには抵抗があるが、人間がどのような局面で騙されやすいのかを冷静に分析した書として価値がある。内容的にかなりオタクっぽい感じは否めず、「おまえ、そういうことを考えている時間があるのだったら、もっと想像的なことに頭使え!」と思わず言ってやりたくなる。詐欺ということに拘らず、人を動かすことに興味がある人も一度中を見ておいて悪くはないかもしれない。

http://www005.upp.so-net.ne.jp/Kaede02/bookreport/bookrep23.html

以上
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ケビン・ミトリック『ハッカーズ』、インプレスジャパン(2006) [社会科学]

元ハッカーが書いた、ハッキングの本。web-siteに感想文をアップロード済みである↓

http://www005.upp.so-net.ne.jp/Kaede02/bookreport/bookrep17.html

ハッカーとは、ここでは不正行為によりコンピューターネットワークに侵入する奴らのことを指すのであるが、犯罪者である。
その犯罪者が堅気になって、コンピューターネットワークの脆弱性を指摘する情報セキュリティ会社を設立したというのである。本書も昔のハッキングの知識を元にして書かれている。考えようによっては、殺人を犯した者が堅気になって警備会社を設立するのと同じで、正直に言わせてもらうと違和感があるのであるが、情報セキュリティ業界ではあまり問題視されないのであろうか。それとも、生身の人間を傷つけたり騙したりするわけではないので、そもそも罪悪感が無いのであろうか?

技術的なことが比較的詳しく書かれているのと、一歩間違えば大惨事になる、といったスリリングな話題が多いので、面白くは読めるが、果たしてこういうのを許しておいていいのかどうかはまた別の問題だ。自社システムのハッキングに成功した人間(言うまでもなく、犯罪者である)を高給でスカウトする、といったこともこの世界では行われているようであるが、悪いものは悪い、といった毅然とした精神が欠けているように思う。ハッキングをやる奴らは、標的に多大の時間をかけて攻略する、いわゆるマニアである。おそらく、こういった連中に攻撃を仕掛けられたら、100%安全であるとはとても言えない(これは、ケビンも認めている)。一方、情報を守るのが仕事である、セキリュリティ担当者は彼等を相手にそこまで時間を割けないので、ハッキングに成功した犯罪者を高給で雇おうといった変な発想が生まれてくるのである。情報を守る、ということに、もっと時間も費用も人手もをかけるべきであろう。

以上

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