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村山 斉『宇宙は本当にひとつなのか-最新宇宙論入門』 [自然科学]

村山 斉『宇宙は本当にひとつなのか-最新宇宙論入門』

☆☆☆☆
講談社ブルーバックス(2011)
ISBN978-4-06-257731-1 C0244
820円

宇宙論の入門書で、最新の研究成果がわかりやすくまとめられています。高校生や中学生が読んでも面白く読むことができるでしょう。

第1章 私たちの知っている宇宙
第2章 宇宙は暗黒物質に満ちている
第3章 宇宙の大規模構造
第4章 暗黒物質の正体を探る
第5章 宇宙の運命
第6章 多次元宇宙
第7章 異次元の存在
第8章 宇宙は本当にひとつなのか

章のタイトルを見ても、見る人が見れば興味をそそるような内容です。過去の研究成果を概観するのではなく、最新の研究成果から紹介していくスタイルを取っているので、現在の科学で上記の問題がどこまでわかっているのか、今後どのような展開が期待されるのかが容易に把握できるようになっています。

一方で、基礎的なところもきちんと書かれているのに感心しました。例えば地球から遠くにある星がどのようなものからできているのか、星の表面だけでなく内部の組成をいったいどうやって調べるのかについての説明が載っています。遠くの星へ行くことはできないにも関わらず、私たちが知っている原子でできているとどうして言えるのか、もしかすると我々が全く知らない未知の物質でできているのではないかという問に対して、科学がきちんと答えを出していることがわかります。

宇宙の年齢が137億歳であるとわかったのは、さほど古い話ではなく(2003年のことだそうです)、現在では宇宙は加速して膨張しているという観測データが得られています。このナゾを解く鍵が暗黒物質と暗黒エネルギー(実態が分からないのでこう呼ぶらしい)で、この2つの正体の解明が現代科学の最大目標の一つだとか。で、ここに異次元宇宙や多次元宇宙という話が出てきて、日常生活の感覚から完全に解離した世界観が広がります。

暗黒物質や暗黒エネルギー、異次元や多次元といったSFのような話が、物理学の最先端では真剣に研究されている、ということをきちんと知ることができ、新鮮な知的興奮を得ることができるでしょう。物理学に多少とも興味がある人にはお勧めです。


以上


宇宙は本当にひとつなのか (ブルーバックス)

宇宙は本当にひとつなのか (ブルーバックス)

  • 作者: 村山 斉
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/07/21
  • メディア: 新書



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ダニエル・アクスト著『なぜ意志の力はあてにならないのか-自己コントロールの文化史』、NTT出版(2011) [自然科学]

本屋でたまたま見つけて購入。面白かったので一気に読んでしまいました。
誘惑に流されて困っている、もっと感情に動かされないようになりたいといった具体的なリクエストのための対処本であはりませんが、自己コントロールの歴史を知るにはよくまとまっていて良い本だと思いました。

ここで言う「自己コントロール」とは、情動や感情を自制することを指します。一時の感情に身を任せてしまい、後で取り返しのつかない事態を引き起こさないために我々には何ができるのか、筆者はこの古くて新しいテーマをギリシア神話、文学小説、心理学や最新の脳科学の知識までを総動員して概観し、現時点で取り得る最善の方法を示してゆきます。

マシュマロテストというのはご存じでしょうか。4歳くらいの子供にマシュマロをあげるのですが(外国だからマシュマロですが日本だったらチョコレートでしょうかね?)、「今すぐに欲しいのであればマシュマロは1つ、でもしばらく我慢して後でもよいのだったらマシュマロを2つあげる」と言って子供に選ばせるのですが、しばらく我慢してマシュマロを2つ取った子供の方が社会的適応性や学業成績が優れているとか。他にも様々な心理学的な実験から、自制心が強い=楽しみを将来に先送りできる、人間はそうでない人間に比べて色々な意味で優秀とされていることが明らかだそうです。この観察事実は今更言うまでもなく、学校の先生はよくよくご存じでしょうが、それをきちんとしたデータで示したことは意味があるんでしょうね。

自制心が先天的なものか後天的なものかという疑問が出てきますが、最近の研究では遺伝的な要素はかなり強いらしいということになっているようですね。ここら辺の議論は微妙な問題を含むために慎重な解釈が必要ですが、脳は神経ネットワークの塊でその神経細胞のデザインは遺伝子で規定されていることを考えると、遺伝的要因はかなり強いというのは当たり前でしょうね。

しかし遺伝子で規定されるのは、あくまで「素因」であって、トレーニングも何もせずに自動的に望ましい自制心が発生することはありません。環境や教育は極めて重要なのは言うまでもありません。現代社会は生物の進化に比べてものすごく早く発達し、インターネットやテレビゲームなどいくらでも時間をつぶせる誘惑に満ちあふれています。これは自制心の育成にとって望ましい環境であるとは言い難いため、我々は誘惑との戦いに明け暮れることになる、と筆者は指摘します。

様々な実例、実験室での実験事実から、人間は自分が考えているよりもずっと意志は弱く、誘惑に流され、自制心はあてにできず、新しい刺激や魅力に逆らい難い存在だというのが、これでもかこれでもかと説明されます。ついでに問題の先送りや依存性に対しても、(遺伝的な素因の差はあれ)人間は弱いというのが実によくわかります。著者は意志ややる気という精神論的な話は全く信用しておらず、ひたすら淡々と実例を並べていきますが、この本で紹介されている自己コントロールの課題はおそらく大部分の人が程度の差こそあれ経験したことのある問題ばかりでしょう。そしてそれらに対処するための(ある程度)有効な方法も示唆されていますが、やっぱりそうだよなぁとうなずくものばかり。世の中は楽をして棚からぼたもちが落ちてくることはまず確実にない、というのがよくわかりますね。




なぜ意志の力はあてにならないのか―自己コントロールの文化史

なぜ意志の力はあてにならないのか―自己コントロールの文化史

  • 作者: ダニエル・アクスト
  • 出版社/メーカー: エヌティティ出版
  • 発売日: 2011/08/09
  • メディア: 単行本



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伊良林正哉『ある博士の自壊』、日本文学館(2009) [自然科学]

一応、小説なのですが、文学小説とするには抵抗があるので、分類は自然科学ということで。
ダメなポスドクがデータを捏造し、それが研究室のボスにばれてクビになるという、たったそれだけのお話です。
2009年に出版された本ですが、2010年に2刷が出ているというのも驚き。ごく当たり前の話なのに、小説として読む人がいるんだぁと、結構感動しました。

小説の舞台になっているのは、医学部の研究室です。出てきたデータを眺めるときの高揚した気持ちや、研究室の雰囲気はよく描けていて、実際この分野に携わった人でしたら誰もが賛同するでしょうね。ちょっとした話のネタに、研究室で読み廻すには悪くない本かもしれません。


ある博士の自壊

ある博士の自壊

  • 作者: 伊良林 正哉
  • 出版社/メーカー: 日本文学館
  • 発売日: 2009/08
  • メディア: 文庫



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はじめてのがん-暮しの手帖49 12-1月号(2010) [自然科学]

ちょっと、仕事関係でがんのケアについて調べている時に見つけた1冊。

記事の著者は、独立行政法人国立がんセンター中央病院、副看護部長・がん看護専門看護師の森さんという方です。長年の経験に裏打ちされた、わかりやすく現実に即した内容です。私が今までで見た中で最良のアドバイス集と言えるでしょう。

医者と話すときのポイント、医者と話すときの注意、治療法について医師に聞くことが箇条書きでまとまっていて、そのまますぐに使えるようになっているのもgoodです。いざ自分が告知されたら、おそらく頭の中が真っ白になるでしょうから、そうなった時に具体的な行動指針はとても役に立つでしょう。

がん患者というのはがんの情報をネットや本で必死に集めるものですが、しかしその情報は取捨選択し、主治医や看護士に見てもらえとアドバイスされています。代替療法(現代医学ではない、別の治療法の総称)の紹介はいいとこ取りをしていることもあるし、もし仮にその治療法が効果を示していたとしても、それが「あなた」に対して有効である保証は無い。がんはあくまで「個人的な」問題なのだから。

いざというときに慌てない、実際的な一冊です。

暮しの手帖 2010年 12月号 [雑誌]

暮しの手帖 2010年 12月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 暮しの手帖社
  • 発売日: 2010/11/25
  • メディア: 雑誌



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『見えない宇宙-理論天文学の楽しみ』、ダン・フーバー著/柳下訳、日経BP社(2008) [自然科学]

明けましておめでとうございます、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

web site「文学作品を読む」は今年で開設10周年を迎えます。文学作品の解釈を中心とした、web siteで出発しましたが、現在ではそれだけに止まらず、web masterの興味を広くカバーする内容となるよう心がけています。ご覧頂き、お楽しみいただければと思っています。

さて、今年初めての書き込みは、天文学を扱った書籍のご紹介です。
天文学というと、夜空を望遠鏡で眺めて星座を思い浮かべてという方も多いと思います。もちろんそういう話もありますが、現代の天文学は物質や空間の姿を探るという学問に発展しています。宇宙には物質の極限状態が存在するので(ブラックホールはその一例)、夜空や星座に興味が無い人でも宇宙を舞台にした研究をしている人は多いのです。

この本が取り扱っているのは、宇宙の構造や歴史のこと。宇宙はどうやって生まれて今後どのような姿になっていくのかを論じた本ですが、まだ未発見の物質やエネルギーの研究がどこまで進んでいるのかをガイドしてくれます。この分野は理論天文学、宇宙論と呼ばれますが、実験室内で完全に再現することが出来ないため、モデルを作成してそこから導き出される結論が現実とどの程度一致するのかを検証する、という方法で研究が進められます。

宇宙の構造を知るためには、宇宙が生まれた時の状況を知らなければならず、そのためには相対性理論や量子論といった学問でアプローチする必要があること、これらの理論が予想する宇宙の姿は我々の感覚とは随分異なるものであること(例えば、空間というのは何もないわけではなくて、絶えず粒子が生成、消滅を繰り返しているという考え方があること)など、興味深い話がたくさん出てきます。著者が一貫して追い求めているのは、この宇宙にあるはずだがまだ未発見のダークマターやダークエネルギー。とてつもなく大きなスケールの話ですが、人間の知性のすばらしさを感じることができます。

昨年は、南部氏、小林氏、益川氏の3人の日本人物理学者がノーベル物理学賞を受賞しました。受賞対象となったお3人の研究内容は素粒子物理学ですから、この本に書かれている内容と深い関係がありますね。朝永氏や湯川氏も素粒子物理学での受賞ですので、日本は伝統的に強いんですね。

以上
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和田秀樹『人は「感情」から老化する』、祥伝社新書(2006) [自然科学]

精神科医で、勉強のノウハウ本を多数出している和田先生の著書。

私も、和田先生の本は数冊読んでいるが、現役でばりばりやっている人のノウハウを公開しているシリーズという位置付け。
知的な生活を送りたいと思っている人や、(学校の勉強に限らず)広く知識を身につけたいと思っている人、必要に迫られている人は和田先生の本を一度は読まれてみるとよいかもしれない。ただし多数出ている本の全てを読む必要はない。ウェブサイトもあるので、そちらも調べてみたらよいと思う。(URLは検索エンジンで調べてください)

この本に書かれていることは、今真っ先に考えなければならないのは老人ではなくて中高年の老化、それも記憶力の衰えではなくて感情の老化とのこと。感情を老化させないためのノウハウが多数紹介されているが、特に目新しい内容はなく、興味と好奇心、そして行動を起こせということである。面白いのが、起業や金儲けというのが脳への刺激として最上級の部類に属するということ。まあ、金儲けはうまく言っても行かなくても考えることが多々あるので、頭を使うという点では最高のゲームではあるのだろう。

学ぶときの注意として、情報を自分自身にインプットするだけではダメ、アウトプットすることが脳への刺激につながるとも説かれている。blogをつくることも脳の活性化に良い、とのこと。

私の読書ノートで紹介するほどの本ではなかったが、興味のある方は手に取ってみては?
私は、古本で300円で手に入れました。

以上


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NHKスペシャル 病の起源 読字障害 [自然科学]

本日、NHKスペシャル・病の起源、「読字障害」を観た。

人の言葉の意味は理解でき、普通に会話もできるのに、書かれた文字を読むことができない人たちについて、その原因を探るドキュメンタリーである。NHKが得意とする科学特集番組で、なかなか見ごたえのあるものであった。

言葉を聞いているとき、文字を読んでいるときの状態を、MRI(核磁気共鳴イメージング)という手法で測定し、脳のどの部位が活性化されているか(正確に言うと、血流が増加して神経細胞が活発に動作している箇所を特定する)を調べるのであるが、読字障害のある人たちは脳の39,40野の機能が充分に働いていないことがわかったそうだ。この部分の働きが充分でないと、視覚野で認識された文字を言葉に変換することができないらしい。番組では、子供を対象にした読字のトレーニングを紹介し、訓練により(ある程度?)読めるようになるらしいので、必ずしもこの部位の先天的な機能低下というわけではないようだ。もっとも、どのように訓練しても機能が上がらない人たちの遺伝子を解析すれば、先天的なものも見つかるかもしれないが。脳というのは、訓練によって失われた機能が代替されたり、不十分な働きしかできなかった部位の機能が向上したりするので、分子的な機能異常との見分けがつきにくいのかもしれない。訓練により機能が上がらなくても、それは単に有効な訓練が見つかっていないだけなのかもしれず、直ちに分子レベルの異常とは言えないように思う。

面白かったのが、フランスの脳科学者が、「もともと脳は文字を認識するようにできていない」とコメントを出していたことである。脳の中に、言語処理のみを専門に扱う機能ユニットというものは無いという意味であり、言語は人類にとって比較的最近の発明品だからというのがその理由である。とすると、本来別の目的で用意されている部位で、脳は言語を無理矢理に処理していて、それが脳の負担になっている可能性も否定できないわけで、そこに人によって得手不得手が生じてくる。番組中では、読字障害がある一方で建築家として優れた才能を発揮している人の例が紹介されているが、脳の情報処理パターン全体として見ると、異常なのではなくて処理のパターンが異なっているだけなのかもしれない。

このblogや私のweb siteを見てくださっている方々は、恐らく読書が好きか得意な人が多いだろう。少なくとも苦手、という人はあまりいないように思う。文学作品を読むのを楽しみにしている人というのは、作品のプロットを追っていくに従い頭の中にその情景がリアリティを持って構築できる人だと思う。これもまた、一つの才能と言えば才能であろう。現代では、いや、人間が社会生活を営むようになってから、自分の意志や気持ちは、言葉により他人に伝えることになっているので、言葉が自由に操れるのは有利だろう。自分の意志や気持ちを、絵や音楽によって表現することは可能ではある。しかし、論説文や報告文の内容を余すことなく正確に音楽や絵で伝えるのは、おそらく難しいだろう。言葉というのは、科学の論説文のように事実を正確に相手に伝えることもできれば、抒情や美しさを伝えることもできる、極めて柔軟性に富んだコミュニケーションの方法なのである。

以上



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鴨川シーワールドの海の生き物パフォーマンス [自然科学]

鴨川シーワールドで、海の生き物パフォーマンスを観てきました。

鴨川シーワールドというのは、関東圏にお住まいの方(特にお子さんのある方)には馴染みの場所かと思いますが、まあ一言で言えば海の生き物を集めた動物園です。ここでは1日に数回、人間と海の生き物のショーを見せてくれます。海の生き物というのは、イルカ、ベルーガ(白い大型のイルカ)、シャチ、アシカです。

どれも15分から20分くらいのショーで、人間の指示に従って動物たちがいろいろな芸を披露するのですが、それぞれの動物たちの習性が出ていて興味深かったですね。シャチは、人間を上に乗せたショーを、アシカは4匹それぞれが愛嬌を振りまくショーを、イルカは見事な集団演技を、そしてベルーガは2匹が会話して連携するショーを見せてくれました。

どれも良く訓練されていて見ごたえがありましたが、イルカの動作が一番複雑で集団演技も可能と、一番知能が高い(=人間の指示により複雑なことをこなせる)ように感じました。4匹がタイミングを揃えて水の中から飛び出るような芸は、もともと集団で動く性質がない動物にはいくら訓練しても不可能かと思いましたが、どうなんでしょうね?動物への指示は、おそらくスタッフの人が首から下げていた、超音波が出る笛でされていたように思います。頭をなでたりするのも、もしかしたら何らかの指示を意味するものなのかもしれません。

どの動物のショーでも、一芸終わることに餌を与えていましたが、ここら辺はいわゆる”即金払い”なんだなあと思った次第です。
我々人間だと、会社勤めだったら1ヶ月に1回ずつと年2回で支払われますが、知能が高くなるほど報酬は後でも我慢して働くようになるのかもしれませんね(笑)

ではでは。
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